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ソフトマテリアル研の学生が第59回熱測定討論会で発表しました。

ソフトマテリアル研究室の大迫宙樹君 (修士課程2年) が、第59回熱測定討論会(日本大学)にて発表しました。

 

DSC によるリサイクル PET の剛直非晶解析

演者:大迫宙樹(ソフトマテリアル研:修士課程2年)、飯島正徳

要旨:PETを含む結晶性高分子の構造は従来、結晶と非晶の2相からなるとされていたが、1990年にB. Wunderlichは結晶と非晶の間に運動性が低下した非晶である剛直非晶(Rigid amorphous)を取り入れた 3相モデルを提案した。2007年にM. Arnoultらは低温の等温結晶化におけるPETとPLLAの結晶化度と剛直非晶量の関係を報告している。また、2022年には剛直非晶と二次結晶化の密接な関係をJ. Chenらが報告しており、結晶性高分子の構造として剛直非晶は非常に興味深いテーマとなっている。本研究では、SDGsの観点から注目されている2種類のリサイクルPET(Polyethylene terephthalate)を用いて、示差走査熱量測定(DSC)から求めた剛直非晶の構造形成における振る舞いを明らかにすることを目的としている。試料は、バージンPET(v-PET)と使用済みボトルを機械的に微粉砕してからボトルとしてリサイクルしたメカニカルリサイクルPET(m-PET)、使用済みボトルからモノマー単位に分解して再合成したケミカルリサイクルPET(c-PET)の 3 種類を用いた。測定温度範囲は273-563K、走査速度10K/min、窒素雰囲気下の測定条件で実験を行った。また483-503Kの範囲で任意の時間等温結晶化を行い、483Kと503Kでは結晶化度を変化させて剛直非晶の振る舞いを解析した。等温結晶化過程を各PETで比較すると、同様の核形成様式をとっていることがAvrami プロットから明らかとなったが、結晶化のピークである半結晶化時間はv-PET<c-PET<m-PETの順に短くなっており、このことからリサイクルPETの結晶成長速がv-PETと比べて速いことが示唆される。結晶成長速度の分子量依存性から、リサイクル過程で分子量が低下したことが要因だと考えられる。さらに、2つの異なる等温結晶化温度で結晶化度を変化させたとき、剛直非晶は次の振る舞いを示した。①リサイクルPETの場合、結晶化度の増加に伴い剛直非晶量は増加傾向から一定に変化した。②v-PETの場合、結晶化度の増加に伴い剛直非晶量は増加から減少傾向に変化した。積層ラメラ構造の非晶内部に新たな結晶が形成される二次結晶化が起こるとき、一次結晶の周りの剛直非晶は二次結晶化に加わり、二次結晶の周りに新たな剛直非晶が形成される。①では、一次結晶化が完了したときに形成される剛直非晶の総量と二次結晶化が起こった時に形成される剛直非晶の総量がおおよそ等しいことが考えられる。②では二次結晶化が起こった時に形成される剛直非晶の総量が、一次結晶化が完了した時より少ないため、減少傾向にあると考えられる。リサイクル方法の異なる 2 種類のPETについて、剛直非晶の振る舞いに明確な違いを見出すことができなかったが、バージンPETとの間には構造形成における差異を確認することができた。

 

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