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生物多様性研の学生が第86回日本植物学会にて発表しました

本専攻の生物多様性研究室の柴政幸君(博士課程1年)、瀧澤英一君(修士課程2年)、水野九十九君(修士課程2年)が第86回日本植物学会(京都大学)にて発表しました。

 

渓流沿い植物の支持器官における柔軟性獲得メカニズム

演者:柴政幸(生物多様性研:博士課程1年)、福田達哉

要旨:渓流沿い植物が受ける地上部の選択圧回避の戦略は,これまで狭葉化のみで説明されていたものの,茎や葉柄といった他の地上部器官に関する適応様式は不明であった.そこで本研究では,渓流沿い植物ヤシャゼンマイとその対照種であるゼンマイを例に,葉柄が受ける物理的なストレスの回避戦略を形態学的,解剖学的,および力学的観点から明らかにすることを目的として研究を行った.形態学的解析の結果,ヤシャゼンマイとゼンマイの葉柄における断面形状に有意な違いが認められず,両種の葉柄断面形状は同程度の楕円を保有していることが明らかとなった.また解剖学的結果から,葉柄の皮層付近の水平断面に関してヤシャゼンマイの細胞サイズの方がゼンマイよりも有意に大きく,ヤシャゼンマイの方が葉柄を形成する細胞が水平面において大きいことが明らかになった.力学的解析の結果から,細胞壁面積あたりの破断直前の荷重に関して,両種間で葉柄の強度はほぼ同程度であり,断面積あたりの変位量に関しては,ヤシャゼンマイの方が有意に大きくなることが明らかになった.これらの結果からヤシャゼンマイは,水流ストレスを受け流す為にゼンマイの細胞サイズよりも拡大させることで,外力に対し細胞の支点間距離を長くして変位を獲得することができ,それがヤシャゼンマイの葉柄における柔軟性に反映していると示唆された.

 

 

海岸地におけるネズミモチの形態学的適応様式

演者:瀧澤英一(生物多様性研:修士課程2年)、楯智樹、柴政幸、吉崎真司、福田達哉

要旨:世界には多種多様な環境が存在し,またそのほとんどの環境に何らかの手段で適応した植物が生育している.その適応メカニズムを明らかにすることは,特殊環境における植林や植栽の緑化に繋がると考えられる.このような多様な環境のうち,私は潮風などの物理的ストレスの大きい海岸付近の特殊な環境に着目し,そのような環境への植物の適応メカニズムを明らかにすることを目的として研究を行っている.研究材料として用いたモクセイ科イボタノキ属の常緑小高木のネズミモチは高知県及び神奈川県で採集した.これらのネズミモチを形態学的及び解剖学的解析を行った結果,両地域の海岸地において有意に気孔を矮小化させていることが明らかとなった.この結果からネズミモチは,気孔の矮小化によって過度な蒸散を防ぎ,海岸地の乾燥ストレスの回避に成功していることが示された.

 

 

海岸地におけるツワブキの形態学的適応様式

演者:水野九十九(生物多様性研:修士課程2年)、柴政幸、福田達哉

要旨:広い生育範囲を持つ植物は生育地間で異なる環境ストレスを受けることがあるため,植物はその環境に適応するために形態を変化させていることが知られている.キク科ツワブキ属のツワブキは,日本各地の内陸地から海岸地にかけて広く生育している植物である.このうち海岸地では強風,強光,土壌に含まれる塩分などが植物の成長を妨げる要因として知られており,これらのストレスに対し植物は例えば多肉化といった形態的な適応様式を獲得していることが明らかにされているため,ツワブキにおいても海岸地において何らかの適応的な形態を示している可能性がある.そこで本研究ではツワブキの内陸と海岸地集団の比較を行うことにより,環境ストレスに対する適応的な形態変化を明らかにすることを目的として研究を行った.
解析の結果,海岸地集団は内陸集団と比べても葉面積は有意に変わらないものの,葉柄は海岸地集団の方が有意に太くなっていることが明らかとなった.この海岸地におけるツワブキの葉柄が太い背景を明らかにするためにフォーステスターを用いた3点曲げ試験を行い,海岸地集団の葉柄の太さに関する力学的背景について議論を行う.

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