本専攻の柴政幸君(生物多様性研:博士課程3年、日本学術振興会特別研究員DC2)によるキク科植物ツワブキの花茎の強風に対する適応戦略に関する論文が Frontiers in Plant Science に掲載されました。本研究の成果の詳細については こちら もご参照ください。
概要
植物が持つ強風ストレスを低減できる主な特徴は、葉身を小さくし、葉柄を短くすることなどが知られていたが、それだけでは繁殖までの説明が難しく、その他の器官の解析が求められていた。ツワブキ(Farfugium japonicum (L.) Kitam. var. japonicum) は、秋から冬にかけて花茎を長く伸ばし、その先端に花が集まった花序を形成するキク科植物であり、海岸沿いの強風地域に生育するツワブキ集団と内陸に生育する集団に関して力学的解析を行った結果、花茎が葉柄よりも力学的には強固に形成されていることが示された。また、この花茎の頑健性は、葉柄よりも有意に細胞壁量を多くしていることが関与していた。この結果から花茎は、まるで電柱のように強風に対して強固な花茎で耐えると考えられた。しかし形態学的解析の結果、強風環境下の海岸沿い集団が花茎を葉柄と類似した高さまで短くしており、花茎が自身の葉に強風から守ってもらうように変化していることが示された。この背景には、葉は損壊しても新しい葉を形成することができるものの、花茎は開花から結実までの一連の成長の際の損壊が、今年度の繁殖に大きな影響を与えると考えられるために、ツワブキの花茎は強固でありながらも強風環境下ではその長さを短くし、強風環境下でも繁殖までつなげていく適応様式が示された。
尚、本研究は科学研究費助成事業基盤研究(C)および特別研究員奨励費の支援の下、実施されました。
Masayuki Shiba, Shuma Arihara, Shiori Harada, Tatsuya Fukuda (2024) Impact on the scape of Farfugium japonicum var. japonicum (Asteraceae) under strong wind conditions based on morphological and mechanical analyses. Frontiers in Plant Science 15: 1407127.
DOI: https://doi.org/10.3389/fpls.2024.1407127