生物多様性研の原田栞里さん(修士2年)が、第68回日本菌学会(八戸工業大学)にて発表しました。
静岡県の蛇紋岩地におけるアンモニア菌に関する研究
演者:原田栞里(修士2年)、安田昂十(修士2年)、柴政幸(博士3年、学振DC2)、鈴木彰、福田達哉
要旨:アンモニア菌は、土壌への尿素等のアンモニア関連物質施与後にpHやアンモニア態窒素が高い時期から発生する化学生態菌群であり、これまでは主に酸性土壌において尿素施与効果に関する研究が行われてきた。これに対して蛇紋岩地は塩基性であり、かつ保水性が低い特性を保有するために一般的な樹種の生育は阻害される場合が多く、特徴的な植生となることが知られており、そのような蛇紋岩地におけるアンモニア菌に関する研究は少ない。静岡県浜松市の静岡大学農学部附属上阿多古演習林内には、蛇紋岩地固有のキク科植物であるシブカワシロギク (Aster rugulosus var. shibukawaensis) が生育する蛇紋岩地が存在する。そこで本研究では、静岡大学演習林内の蛇紋岩地及び非蛇紋岩地 (対照地) の2地点にそれぞれ尿素施与区を2調査区設け、800の尿素施与を行うことにより土壌の理化学要因 (pH, 無態窒素濃度, 含水率) 及び菌類相の変化を明らかにすることを目的として研究を行った。その結果、アンモニア態窒素濃度は、尿素施与後に急激に上昇したのちに低下していく傾向が両尿素区ともに示された。蛇紋岩地尿素区では、発生したアンモニア菌に関してSagaranella tylicolor, Coprinopsis phlyctidosporaの2種しか確認されなかったが、対照地尿素区ではそれらに加えてCoprinopsis. sp., Hebeloma danicumの合計4種を確認することができた。このうち両尿素区で確認することができたS. tylicolorとC. phlyctidosporaはどちらも遷移前期に発生する腐生性のアンモニア菌種であり、本研究では比較的多くの個体を採集することができたS. tylicolorに関して、両尿素区のおける形態的な特徴に関して議論する。