博士課程2年の原田栞里さん(生物多様性研)による蛇紋岩環境に生育するアンモニア菌の子実体における適応形態に関する論文がEcological Reaserchに掲載されました。
概要:
蛇紋岩土壌は多くの植物分類群に対して強いストレスとなり、それがそこに生育する植物の形態変化に関与していることが知られているものの、菌類における子実体形態の変化に関しては不明な部分が多い。アンモニア菌は冷温帯から温帯の森林に広く分布しているが、蛇紋岩土壌におけるその出現状況や形態的特徴については、ほとんど解明されていない。そこで蛇紋岩土壌および非蛇紋岩土壌に対して尿素を散布する予備実験を行ったところ、外生菌根を形成するアンモニア菌の一種であるアシナガヌメリ(Hebeloma danicum)が、両方の土壌タイプに出現することが確認された。この知見に基づき、本研究では蛇紋岩土壌と非蛇紋岩土壌におけるアシナガヌメリの子実体の形態を比較した結果、蛇紋岩土壌に発生したアシナガヌメリの子実体は、非蛇紋岩土壌由来のものよりもサイズおよび乾燥重量が有意に小さいことが明らかになった。さらに形態解析の結果、蛇紋岩土壌由来の子実体では、傘および柄が非蛇紋岩土壌由来のものよりも有意に小さいことが示された。本研究は、蛇紋岩土壌においてアンモニア菌の子実体のサイズが変化することを示す初めての研究であり、本研究の結果から菌類は、植物の生殖器官に見られるのと同様に、環境に応じて形態を変化させる性質を持つことが示唆された。
尚、本研究は静岡大学農学部附属地域フィールド科学教育研究センター天竜ブランチにて行い、また科学研究費助成事業基盤研究(C)および特別研究員奨励費の支援の下、実施されました。
Shiori Harada(博士課程2年), Hiroto Fukayama(大学院修了生), Masayuki Shiba(客員研究員), Taiga Kasuya, Tatsuya Fukuda, Akira Suzuki(2026)
Comparative morphology of fruiting bodies of the ectomycorrhizal ammonia fungus Hebeloma danicum in serpentine and neighboring non-serpentine soils.